
神奈川県立金沢文庫
歴史
貫井 裕恵
NUKUI HIROE
自己紹介
2016年より、神奈川県立金沢文庫で学芸員をしております。金沢文庫には7名の学芸員がおりますが、そのうち4名は歴史学や仏教学を専門とする文献担当の学芸員で、私は歴史学を専門とする学芸員の一人です。金沢文庫で管理する文献の代表的なものは、国宝「称名寺聖教・金沢文庫文書」です。平成28年に国宝指定を受けた貴重な史料群を中心に、保存・調査・研究を行い、その成果について、展覧会や講座を通じて、お客様にわかりやすく、たのしくお伝えできるよう心がけています。
所属館の設置者・運営母体は ?
神奈川県直営の機関で、県立の他の社会教育施設と同じく、教育局に属しています。学芸員を含め、事務職など内部の職員は基本的に県職員(公務員)です。
あなたの専門分野は ?
日本中世史・寺院史料論
学芸員になろうとした理由、学芸員になるまでの経緯は ?
小学6年生で初めて歴史を学び、とてもわかりやすく論理的に教えてくれる先生と出会い、歴史に関心をもちました。父が教員ということもあり、高校の歴史の先生になりたいと思い、大学では日本か西洋の歴史を学ぼうと決めていました。大学で学んでいくなかで、古文書原本を見る機会があり、たった一枚の紙から歴史が紡がれることを知り、古文書や古記録など、先人たちが遺した文化財としての史料に関心を寄せるようになりました。一生古文書に関わっていけたらという思いで、大学院に進学することにしました。日本学術振興会特別研究員になり、東京大学史料編纂所という歴史学の研究所でお仕事をさせていただくなかで、さまざまな研究者の姿を見つつ、そこから学びながら、一層歴史研究の魅力に取り憑かれていきました。その後、ご縁をいただき、中世文書の宝庫である金沢文庫の学芸員になりました。
神奈川県立金沢文庫外観正面 トンネルより
仕事内容は ?
学芸員の仕事は、所属する美術館・博物館で所蔵あるいは寄託を受けている文化財を中心に、①保存、②調査・研究、③展示、④教育普及を担います。①保存では、収蔵庫の温湿度管理など恒常的な保存環境の管理を行います。②調査・研究では、文化財のコンディションをチェックし、修理が必要な場合には、装潢師の方々と修理について相談し、修理方針を決めるなどしていきます。文化財調査を通じて研究も行います。単に書かれている文字を読むだけではなく、どういった材質・大きさの料紙に、どのような墨で、どのような筆跡で書かれているのか、どのような形態で伝わってきたかなど、刊本ではわからない情報も大切です。③展示や④教育普及では、前者は展覧会を、後者は講座等を通じて、②調査・研究の最新の成果をわかりやすくお伝えするように心がけています。
県立金沢文庫の場合、管理する文化財の多くが隣接する称名寺の所蔵品です。そのため、旧蔵史料の調査・研究も重要な用務のひとつとなります。国内外に伝存している文化財の情報を収集し、それらを調査することで、中世の称名寺のアーカイブズを復元する調査・研究を行い、そうした成果をお伝えする展覧会などを企画しています。
県立金沢文庫の場合、管理する文化財の多くが隣接する称名寺の所蔵品です。そのため、旧蔵史料の調査・研究も重要な用務のひとつとなります。国内外に伝存している文化財の情報を収集し、それらを調査することで、中世の称名寺のアーカイブズを復元する調査・研究を行い、そうした成果をお伝えする展覧会などを企画しています。
金沢文庫創設750年記念 特別展 金沢文庫本(2025年11月~2026年1月)では、金沢文庫本を取り上げ、書物を守り伝える営為について、
名古屋市蓬左文庫と連携しました。

特別展 金沢文庫本―流離う本の物語―展示室風景
仕事のやりがいのポイントは ?
先人たちから継承してきたかけがえのない文化財を、着実に受け継ぎ、未来に守り伝えていく―。私たち学芸員はそれが最大の任務だと感じています。未来に守り伝えていくためには、文化財それぞれの価値を、未来を担う人びとにしっかりと伝えていくことが大切だと感じています。学芸員は文化財の一番近くで、それらひとつひとつの魅力に触れ、探求する機会があります。日本の歴史・文化を形づくってきた文化財の継承のため、日々調査・研究を行い、それらの価値を創造しつづけ、発信していくことが、なによりのやりがいだと思っています。
学芸員として必要なスキル、経験、資格は ?
学芸員として必要なスキル・経験は、以下3つであると思います。
第一に、自身の専門とする分野の基本的な研究手法と専門知識です。とくに展覧会では、担当する展覧会すべてにおいて常に専門であるということは難しいです。しかしながら、自分の学問的「軸足」を学生のうちにしっかりと培っておくと、対応できるスキルがつくように思います。ぜひ学生のうちに、広い視野とともに、高い専門性を身につけておいてほしいと思います。学芸員になると、若手であっても、自身の専門分野について担当としての意見を周囲から求められます。もちろん、学芸員になってからもアップデートしていくことは当然ですが、学生のうちにしっかりとした土台を培っておくとよいなと感じます。
第二に、「モノ資料」に対する飽くなき探求心、そこで得られた知見を多くの方に伝えたいという気持ちです。まだ誰もみたことも聞いたこともない、遙かなる中世という時代の「景色」を、遺された文化財ひとつひとつと向き合い、その「声」に耳を澄ませながら想像する―そこにはまだ誰もみたこともない「景色」が広がっているはずです。ひとつひとつの文化財に真摯に向き合い、調査し、研究することによって、そうした光景が必ずみえてくると信じています。文化財調査の現場で、まだ誰も知らないことをみたい、知りたいという「ワクワク感」でいつも心が満たされています。そして自分が感じた「ワクワク感」を、多くの方に知っていただきたいという気持ちが、最大のモチベーションであり、学芸員の醍醐味であると感じています。年月を重ねても、そうした気持ちを持ち続けたいと思っています。
第三に、コミュニケーション力と調整力です。意外かもしれませんが、学芸員の仕事は、調査・研究、展覧会の準備や博物館・美術館の運営に至るまで、チームプレイが大半を占めます。さまざまな専門、背景そして個性をもつ内外の学芸員や研究者たち、そして事務職との協業によって、はじめて展覧会を開催することができ、博物館・美術館の運営が可能となります。金沢文庫の場合、展覧会は一人で担当することが多いですが、他の学芸員の担当展を手伝ったり、全員でひとつのテーマのもと展覧会を企画することもあります。組織のなかで、他の学芸員や事務職の方々と助け合い、意見を交わしながら、よりよい展覧会、よりよい館の運営を実現させていくことが大切だと実感しています。
第一に、自身の専門とする分野の基本的な研究手法と専門知識です。とくに展覧会では、担当する展覧会すべてにおいて常に専門であるということは難しいです。しかしながら、自分の学問的「軸足」を学生のうちにしっかりと培っておくと、対応できるスキルがつくように思います。ぜひ学生のうちに、広い視野とともに、高い専門性を身につけておいてほしいと思います。学芸員になると、若手であっても、自身の専門分野について担当としての意見を周囲から求められます。もちろん、学芸員になってからもアップデートしていくことは当然ですが、学生のうちにしっかりとした土台を培っておくとよいなと感じます。
第二に、「モノ資料」に対する飽くなき探求心、そこで得られた知見を多くの方に伝えたいという気持ちです。まだ誰もみたことも聞いたこともない、遙かなる中世という時代の「景色」を、遺された文化財ひとつひとつと向き合い、その「声」に耳を澄ませながら想像する―そこにはまだ誰もみたこともない「景色」が広がっているはずです。ひとつひとつの文化財に真摯に向き合い、調査し、研究することによって、そうした光景が必ずみえてくると信じています。文化財調査の現場で、まだ誰も知らないことをみたい、知りたいという「ワクワク感」でいつも心が満たされています。そして自分が感じた「ワクワク感」を、多くの方に知っていただきたいという気持ちが、最大のモチベーションであり、学芸員の醍醐味であると感じています。年月を重ねても、そうした気持ちを持ち続けたいと思っています。
第三に、コミュニケーション力と調整力です。意外かもしれませんが、学芸員の仕事は、調査・研究、展覧会の準備や博物館・美術館の運営に至るまで、チームプレイが大半を占めます。さまざまな専門、背景そして個性をもつ内外の学芸員や研究者たち、そして事務職との協業によって、はじめて展覧会を開催することができ、博物館・美術館の運営が可能となります。金沢文庫の場合、展覧会は一人で担当することが多いですが、他の学芸員の担当展を手伝ったり、全員でひとつのテーマのもと展覧会を企画することもあります。組織のなかで、他の学芸員や事務職の方々と助け合い、意見を交わしながら、よりよい展覧会、よりよい館の運営を実現させていくことが大切だと実感しています。
雪の日の称名寺