
横須賀市自然・人文博物館
動物
内舩 俊樹
UCHIFUNE TOSHIKI
自己紹介
2007年より横須賀市自然・人文博物館で昆虫をはじめとする陸上無脊椎動物担当の学芸員をしています。専門は昆虫類、中でも直翅系昆虫類の高次系統分類学ですが、地域博物館の学芸員として身近な昆虫類をテーマとした研究を行っています。例えば、横須賀市内におけるカブトムシの移動調査やスズメバチ類のトラップ調査を行ったり、博物館のフィールドである三浦半島の昆虫相から市民による調査と学習に役立つ「身近な昆虫」を抽出して他地域との比較を可能にするための調査を行ったりしています。
所属館の設置者・運営母体は ?
横須賀市教育委員会に位置づけられた機関であり、いわゆる直営(学芸員を含む運営スタッフが横須賀市職員)で運営しています。
あなたの専門分野は ?
直翅系昆虫類の高次系統分類学
学芸員になろうとした理由、学芸員になるまでの経緯は ?
昆虫は田舎の祖父母から送られたカブト・クワガタをきっかけに幼稚園の頃から興味があり、昆虫図鑑だけがボロボロになっていたそうです。しかし、当時は虫好きを発展させる出会いや機会が特になかったので、大学3年で昆虫学と出会ってはじめて昆虫研究を志しました。学生時代は学園祭の運営に携わったり、自転車で10日間約1,500kmの旅をして帰省したり、環境教育に関わる様々な研修会に参加したりと、虫と関わるエピソードは少なめですが、そうした中での失敗や出会いや自信が今の仕事の地域連携やボランティア対応に生きています。大学院で学位取得後、専門分野と社会とのつながりを模索する中で今の仕事にたどり着きました。
仕事内容は ?
前任の学芸員からは、5万点を超える昆虫標本と地域の市民昆虫研究団体とホタル類の発生フィールドや観察会を引き継ぎました。昆虫標本については整理とさらなる収集を進めており、研究団体とは連携事業を通して会員の世代交代を促し、現在も人気の行事であるホタル観察会を継続させつつ、当博物館の伝統であった発光生物の研究資料を利用可能な状態に向け整理しています。その一方で、自身が立ち上げた事業としては、“身近な昆虫”をテーマとした研究・教育事業、虫に興味のある子どもを対象(かつての自分自身が受講していたらもっと虫にのめり込んでいたかも)とした昆虫教室のほか、近隣商店街をはじめ地域へ展開する“おでかけ博物館”、地域の子どもから大人までを巻き込んだ“みんなの理科フェスティバル”などがあります。

“おでかけ博物館”が縁で近隣商店街や町内会の協力のもと実現した“ナイトミュージアム”。
1日or1週間の業務スケジュールと働き方は ?
博物館は9時開館のため職員は8時45分までに出勤し、17時の閉館を経て17時半が定時になります。月曜休館に合わせて休み、火~金は通常出勤、土日は半数勤務といって職員の半分を出勤、半分を休みとする交代勤務をします。火~金は来館者が少ないですが、市役所や教育委員会からの照会や打合せなどが多いです。土日は来館者が多くなり窓口対応も増えますが、夏は主催行事や観察会の依頼が多くなるので館を空けて出張することが多いです。展示の準備は来館者のいない閉館後や休館日に行うことが多いです。
仕事のやりがいのポイントは ?
担当した展示の反響が大きかったり、制作した図鑑を行事に持ってきてくれたり、窓口や見学対応、行事の際に対面で感謝や楽しかったなどの声をいただいたりすることなどは、直接的にやりがいを感じるところです。整理した昆虫標本について情報と写真をまとめて目録を完成させたり、市民研究団体と一緒に研究雑誌を発行したり、大小さまざまな展示や出展、行事やイベントを無事に終えたりすることなど、一つ一つの仕事を完遂させたときにもやりがいを感じます。

展示更新の作業の様子と制作した図鑑を使った観察会の様子。
たいへんなところは ?
今の博物館や担当する昆虫分野で関わる様々な方々が置かれている現状を考慮して、大切だったり、やらなければいけなかったりと感じることを優先して行うようにしているのですが、それらを並行して行うことは大変だと感じていますし、その上で自分自身の研究キャリアや挑戦したいことも大切にするには、さらに大変だということは間違いありません。大変さを感じるとき、それを乗り越えた先にある“やりがい”に心を馳せています(たぶん現実逃避かも)。
今後やってみたいことは ?
昆虫などの生きものは趣味や学びの対象ではあるものの、自分と同じような命ある存在としてどれほど実感されているか疑問に思うことがあります。そこで、人間も自然の一部であってエコロジーを考えることが人類の将来を考えることに重なるようなテーマの展示に挑戦してみたいです。また、小中学生の理科教育を社会と接続する“みんなの理科フェスティバル”というイベントを立ち上げましたが、理科だけに限定せずあらゆる探究学習が社会につながる“みんなの博物フェスティバル”へ発展させたいです。一方、市内に80近くもある小・中学校・高校に対して、どうやったら広く博物館の学びを届けられるのか、についても考えたいです。
学芸員として必要なスキル、経験、資格は ?
学芸員として採用されるために学芸員資格は必要ですし、資料を運搬することになるので普通自動車免許が必要です。地域の学びに関わる際に、分かりやすい教え方だけでなく探究活動を導けるような研究経験が必要になりますので、教員免許や修士・博士の学位はそうした経験を裏付けるものとしてあるといいでしょう。子どもから大人まで地域のあらゆる人と関わることになることから、学業、部活動・サークル、アルバイトなどの様々な活動や対人関係の経験を通した広い視野があると、様々な困難を乗り越える際に役立つでしょう。